【番外編】「スーパー台風セブ直撃!」の巻



12月16日の夜,台風22号(フィリピン名オデット)がセブを直撃した。夜6時半の時点では、「スーパー台風といわれている割には風もなく穏やかなものだなぁ」という感じで、のんびりビールをあおりながら余裕をこいていられたのだけど、7時を過ぎる頃になって状況は突如激変してしまった。猛烈な風が狂ったように吹き始めて、スーパー台風の攻撃があっという間に始まったのだ。
風向きはうちの部屋の窓とは逆側だったのだけど、向かいのビルにぶつかった風が跳ね返ってくるのか、ひっきりなしに突風が窓ガラスを叩きつけてくる。そのうちに風は窓ガラスだけでなく窓枠ごと揺さぶり始めてきた。これはもう時間の問題だろうと、最悪ガラスの破片が部屋の中に飛び散らないようカーテンを閉めて、トイレに避難した。うちの部屋はスタジオタイプ(つまりちょっと広めのワンルーム)なので、他に身を隠せる場所がないのだ。
するとすぐに「バシーン!」と激しい金属音がして、続いてガラスの割れる音が聞こえた。ドアを開けて部屋を覗くと、カーテンが風に煽られていた。窓がやられてしまったのだ。
台風の襲撃は,予報では夜7時から午前1時までということだったので、10時頃に台風の目に入るはずだった。時間を見るとまだ8時にもなっていなかった。窓が割れて吹きっさらしの状態で、あと2時間。部屋の中はきっとぐちゃぐちゃにされてしまうだろう。一応コンピューター類は安全な所にしまってはおいたが、どうだろうか。家具はもうきっとダメだろう。電気はとっくの昔にストップしている。全くのところ、真っ暗なトイレでただじっと座っているしかできることはなかった。
今回の台風は実に予定通りの動きをした。
夜10時を過ぎると、突然風がおさまった。台風の目の中に入ったのだろうか?しばらく待っても何の音もしなかったのでトイレから出ることにした。箱舟から出てきたノアの気持ちはこんなだったに違いない。部屋の中はどれほどひどい状態になっているだろう?恐る恐る懐中電灯で辺りを照らして様子を確かめた。
非常に幸いなことに、というか意外なことに、部屋は全く荒れていなかった。
窓は4面のうち1面が枠ごとベランダに飛ばされていて、窓ガラスは粉々になっていたけれど、おそらく先に枠が外に飛ばされたのだろう、ガラスの破片はベランダに落ちているだけで、部屋の中には一つも落ちていなかった。当然のことながら、部屋の中には水も吹き込んでおらず、ざっと見たところ他に被害は確認できなかった。
経験から、眼を過ぎてからの後半の台風は、前半よりも遥かに勢力が弱いことを知っていた。案の定、11時過ぎに再び台風が始まったけど、今度はそれほどでもなかった。部屋の向きが良かったのだろう、時折窓ガラスがバタバタと叩かれることはあっても、前半部と比べるとかわいいもので雨の吹き込みもなかった。暴風圏を抜けると言われていた夜1時になると、本当に風も収まってしまった。
とりあえず、困難の時は去ったようなので寝ることにした。ベッドもそのまま使えそうだったのでベッドに横になった。窓ガラスが吹き飛ぶほどの被害があったのに、まさかベッドで寝られるとは思わなかった。
しかし、問題は夜が明けてからだ。電気も止まっているし、当然ネットも止まっているだろう。水道は今のところ使えているけれど、ずっと使えるのだろうか?一体いつになったら復旧することか。
と、こんな感じでスーパー台風オデットの襲撃が終わってくれた。
個人的な被害がそれほどでもないようだったので、この時点では、再び「スーパーと言われていた割には、それほどスーパーじゃなかったんじゃないかな」という気持ちになっていた。
しかし実際のところ、セブの被害は相当なものだった。