【番外編】三つ数えて、目をつぶれ。

さて、セブはもともとホームレスがいたのだけど、コロナのあとになってからさらにホームレスが増えてきたように感じてしまう。あちこちの道端にホームレスが寝そべっていて、場所によっては素通りするのもちょっと怖く感じてしまうほどだ。女性だったらもっと通りたくないに違いない。
で、いつの頃からか、家のマンションの前の道にホームレスが住みつくようになっていた。
それが彼。


年齢はそこそこ高そうに見えるけど、生活が荒れていてそう見えるだけかもしれない。でも、40歳は越えていると思う。いつもこうして後ろを向いて座っている。どこで食べ物や飲み物を得ているのかわからないけど、朝から晩までほとんどずっと同じ格好で座っている。同じマンションに住んでいる知り合いは、「もう精神がすっかりおかしくなってるよ、あの人は」というし、自分もそう思うのだけど、それと同時に思うのは、「どんな経験が、人をこんな状態に追い詰めてしまうのだろうか」とういこと。
生きていれば何かしら嫌なことやひどい目にあうことはあるけれど、大抵の嫌なことはその場限りで精神が壊れてしまうほどではないだろう。仮に嫌なことの度が過ぎて、鬱や何らかの精神病に陥ってしまったとしても、ホームレスになって何もしないで一日座っているほど壊れてしまうというのはほとんどありえないのではないだろうか?引きこもりが問題になることがあるけれど、この人の場合はそのさらに上をいっているように思う。
人はどれだけひどい目に遭えば壊れてしまうのだろうか……?
いや、本当に壊れていればまだいい方かもしれない。もしも彼に少しでも正気がまだ残っていたら……?
それはちょっと考えたくない。