【番外編】セブ、水の話その4。こぼしても気にしない?

そういえばもうひとつ水について気がついたことがあった。
日本にいた頃は水をこぼすというのはちょっとした事件だった。こぼしたのがテーブルであっても、床であっても、あわててオダイブキンや雑巾を取りに行って、大急ぎで拭き取ったものだ。海外に暮らすようになって、その感覚がすっかりなくなってしまった。
一番最初は香港だ。飲茶に行った時、お茶を注ぐ際に急須からお茶がこぼれてテーブルクロスに色がついても、香港人は誰も気にしないのだ。こちらなど「あ、こぼしちゃった。お茶の色までついちゃった。あの色とれるのか?」などと気にしてしまうけど、向こうの人は全くお構いなしだ。
確かに考えてみると、テーブルクロスというのはテーブルを汚れから守るのが仕事で、毎回使ったらきれいに洗うのが基本だからお茶くらいこぼれたってどうってことないのだろう。しかし日本人としては、お茶をこぼしても全く気にしないというのは少しショックだった。

さて、それがテーブルクロスでなくて、床であっても同じなのが海外だ。
日本の床は畳やフローリングだからもちろん水はご法度だ。でも海外の床は、特に南方はタイル張りなので、水がこぼれようとどうってことはない。そもそも掃除自体、日本はホウキがけか乾拭きが基本、水拭きだって硬絞りが基本だろう。でもこちらは学校の床と同様に、モップと洗剤で床掃除だ。その時だって、少し水が多くても、気にしない気にしない。どうせすぐに乾くのだ。
そんなわけで、最近では水をこぼす、という行為に全く罪悪感がなくなってしまった。この前も床に少し水をこぼしてしまったのだけど、足でくちゃくちゃっとやって、それで済ませてしまった。そして実際に南方生活ではそれで住んでしまうのである。案の定5分もしないうちに床はすっかり乾いてしまった。



水をこぼすのは罪、というのは、日本のローカルルールだったのかもしれないなぁ、と思うようになってしまった。だんだんと、もう二度と日本の生活に戻れないような気がしてきている。